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(1)海域環境整備
水・底質の改善を図るため、香椎海域(約10ha)及び和白海域(約107ha)を対象に良質砂による種砂を行い、底泥からの栄養塩類の溶出を削減する。なお、香椎海域については、浅海域であるため自然異境への影響を考慮して覆砂を行う前に覆砂相当量の浚渫を行う。
また、香椎海域と湾央海域との海水交換を促進するとともに、香椎川からの流入負荷をできるだけ早く湾央海域へ排出させるための施策として、作れいについても検討を行う。
(2)陸域県境整備
海岸の整備にあたっては、生物生息環境の改善に資する構造を基本とし、海域の浄化機能及び周辺の景観との調和にも配慮した護岸形式の整備を図り、自然植生に配慮した緑化を行う。
また、親水機能の向上を図るため、砂場づくりや展望デッキの整備さらには、緩傾斜護岸等の整備や養浜を行うこととするが、その規模等については、既存の生物生息場にも十分配慮し、実施にあたっては生物への影響をモニタリングしながら進めていく。
さらに、水際線のネットワークを図るため、護岸の天端には遊歩道機能を持たせ、水際線に民家が存在する区間については、植栽等により干潟等の自然環境との調和を図る。
(3)異境管理
?施設の環境管理
海岸施設等の維持管理にあたっては、野鳥の行動や人の利用状況の把握を行い、施設の特性に応じた管理体制を検討していく。
?モニタリングと柔軟な管理
エコポートは、自然異境と共生したアメニティ豊かな、環境への負荷の少ない港湾を目指しており、エコポートモデル事業においては、環境のモニタリングを実施し、自然異境の保全の状況と事業効果を確認しながら事業を進めることが重要である。特に海域に関する事業効果を把握するためには、浚渫・覆砂区域での水底質、底生生物の生息状況、作れい区域周辺での水質、護岸改修部での潮間帯生物の生息状況、及び養浜域での底質、底生生物の生息状況についてモニタリングを実施する必要がある。
このため、他の行政機関との連携を図りながら、水質・野鳥・干潟生物・貴重な生物群集・群落等についてモニタリングを行い、必要に応じて補足的な施策を講じることにより、良好な質の高い環境を維持するよう努める。
?協調連携体制
福岡市では、博多湾総合調査委員会を組織し、博多湾の水質改善について行政を中心とした横断的な取り組みを積極的に実施しているところであるが、さらに港湾環境への広範な要請に体系的に対応できるよう、積極的な取り組みを図る。
?市民との連携
異境施策の円滑な推進を図ることはもとより、環境負荷の抑制や県境モニタリングの実施において、市民の理解と協力を得るため、わかりやすい情報の提供、環境学習の場の提供、ボランティア活動の推進などに努める。

5. 今後の課題

エコポートモデル事業は、今後おおよそ10年問実施し、環境との共生を図っていくが、環境との共生(エコポートの形成)は港湾に課せられた重大なテーマであり、モデル事業の対象地区のみならず、将来にわたり博多港全体に取り組みを広げていく必要がある。
また、博多港の港湾区域は広く、博多湾との一体性は常に言及されるところであって、施策の実施にあたっては、海岸施設等の管理のあり方、貴重な動植物の保全・管理等について湾全体で整理する必要がある。
エコポートモデル対象地区は、博多港でも豊かな自然を有している地区でもあり、この地区の整備の中から得られる知見を他地区の整備に活かしてゆく必要があり、モニタリングを適切に実施し、施策の効果を判断しながらその後の施策に反映させること、さらに新技術の導入等により柔軟な対応がとれるように努めることが重要である。
また、博多港の水質浄化に関しては、港湾事業のみでの対策では限界があり、流入河川からの汚濁負荷の低減を図るため、下水道の整備や河川の浄化についても、関係機関と連携を図りながら広域的な課題として取り組んでいく必要がある。

6. おわりに

福岡市は1996年(平成8年)8月に第7次福岡市基本計画を策定した。
新たな基本計画は、「人・交流の都〜福岡」を基本的考え方としており、その実現のために博多港は、物・人・文化等のゲイトウェイの機能を果たすとともに、環境と調和した人々のやすらぐ空間として機能していかなければならない。
おりしも、1995年(平成7年)7月に発表された運輸省の長期港湾政策「大交流時代を支える港湾」において、北部九州地域は三大湾地域とともに、中枢国際港に指定された。
博多港の果たす役割は、北部九州地域の活動を支え、豊かな生活を実現するためには、ますます重要となっており、今後とも、港湾の整備にあたっては、博多湾の豊かな自然環境を生かしながら、人と自然の共生を目指していきたいと考えている。

 

 

 

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